島第2弾、青ヶ島道中記その5

公演準備をしながらも一応書いていた。旅行記の続き。もう3ヶ月も前の話であるが。

現在二日目のお昼。旅はようやく折り返し地点であるというのに道中記その5まで来てしまった。
昼飯を食いに、地熱釜まできたのであった。2回目の地熱釜であるが、今回のお弁当はふつうの弁当だったので特に蒸すものはなく、淡々と食べた。突風でおばっちゃんの弁当が飛ばされて崖下に消えて行ったり、猫が寄ってきたりしてのどかであった。

さて、食材を蒸すわけでもないのになぜ地熱釜あたりまで来たかというと、今度は我々が蒸されるためなのである。地熱釜のわきには、「ふれあいサウナ」という地熱を利用したサウナがあるのだ。原理としては地熱釜と全く一緒である。開店まですこし時間があったので、いったん集落のほうまで戻り買い出しをする。釜で蒸したソーセージと卵の味が忘れられず、ひとつずつ買う。あとサウナ上がり用の、ここはぐっとこらえてノンアルコールビール。お店にいたお姉さんがきれいでよかった。おばっちゃんがきっちりお姉さんの出身地とかを聞き出していたのには驚いた。買い出しを済ませたのち、戻っていよいよサウナの建物に入る。すでにむわっと熱い。この時期はいいが、夏は耐えられんだろうなあ。入口で受付をするが、なぜか記名式だった。今朝ヘリで来ていた妙齢の女性二人組がどうやら先に来ていることが分かった。そして名前と年齢を特定してしまった。別に知りたかったわけではないが、知ってしまうとなぜかドキドキする。ちなみに当然後を尾けてきた形になってしまった我々の名前と年齢も明らかにさせられてしまった。

記名し料金を払ったあと、タオルを取って、階下のサウナへ向かっていく。更衣室の床がすでに熱いし、水風呂も普通にお湯になっている。貸し切り状態であったので写真をとったが、おばっちゃんのやつが写ってしまっていたのでここで全世界に拡散することは控えることにしよう。休憩室が家のようでかなりまったりできる場所だったので、しばらくここでのんびりしてしまった。

しばらくの時間をすごしたのち、残る観光スポットに向かう。大体のところは制覇したのであとは島の総鎮守である「大里神社」くらいだ。

途中まで、苔むしてはいつつも舗装された道を進むとほどなくして鳥居が現れた。ここが大里神社への入口らしいが、鳥居の先の光景には目を疑った。参道だと思われるが、急な坂道に玉石が敷き詰められ、滑り台のような道?が続いている。東台所神社の参道より凶悪な坂道であり、登ろうかどうかほんとに躊躇ってしまった。しかし、ここまできて登らない選択肢はないので注意を払いつつ登っていく。来るまでは正直ショボい神社だろうと甘く見ていたが、どっこいかなり本格的で雰囲気がある場所であった。入口付近も急だったが、途中からさらに急になる。もう壁。登りきると、小さなほこらとかがうっそうと茂った木々に囲まれてたっており、めずらしく私も神妙な気持ちになる。最高地点ではないが、ちょうど池野沢方面と集落の方面とを見守るような場所にあり、また、昔は両者を結ぶ道の近くでもあったようで、まさに総鎮守にふさわしい場所であるように思われる。
さて、登ったら下りないといけないわけだが、登り以上に緊張する道のりであった。写真を見ていただければいかに急かが分かると思う。

さすがに2日間青ヶ島内を動き続けて疲れがでたのか、ここからしばらく記憶がない。宿で仮眠して、飯食って、仮眠したはずだ。寝てばかりだから記憶がなくて当然か。そして時刻は21時過ぎ。晴れていれば、星空撮影に向かおうと話していたが、どうやら晴れているみたい。今日は酒を飲んでいないので、車に乗ってカルデラ内部、地熱釜付近にまた向かう。夜はほんとに道が暗く誰もいない。

地熱釜付近に着いたらサウナの管理人のおっさんがちょうど帰るところだった。おっさんが帰るともう付近には我々しかいない。写真で見るような、とまではいかなかったが、真っ暗な外輪山に囲まれた星空はたしかにプラネタリウムのようでもあった。

おばっちゃんは撮影をするために来ていたが、僕はどちらかというともう一度地熱釜をやりたくて来ていた。ソーセージと卵という王道の二種類を釜に入れて、撮影に付き合う。

と、突然暗闇からおっさんが現れてものすごく驚いた。さっき帰ってったサウナの受付をやってたおっさんだが、車に乗ってったはずなのに、徒歩で現れた。どうしちゃったのかと思ったらおっさんがしゃべりだした。どうやら、途中で車が故障して、車屋に電話を掛けにサウナまで戻ってきたらしい。で、自動車整備工場に電話を掛けたところ、近くに軽トラがあるからそれに乗ってけと言われた(それもまたワイルドだが)らしい。しかし、その軽トラのおいてあるところまでの道のりは、星空観察できるくらい真っ暗だし、距離もあるので我々の車に乗せてってくれないかとのこと。そんな申し出を断れるはずもなく、載せていってあげる。ちょっといったら、確かに空地に軽トラが止まっていて、案の定キーはぶら下がっていたし、おっさんも躊躇なく軽トラに乗り込んで帰って行った。よかったよかった。
そんなことをやっている間に、ソーセージと卵は蒸し終わった。やっぱり最高や。密漁者みたいになったが最高や。静寂と星空に囲まれて2日目の夜は更けていった。あ、ちゃんと宿には帰って寝た。

翌朝は曇っていた。日の出は見られそうもなかったので、おばっちゃんは寝たままだった。私は名残り惜しすぎて、ひとりでもう一度大凸部に登り、日の出は見られなかったが、この島の地形を目に焼き付けた。帰りたくなかった。

しかし楽しい時間はあっという間に過ぎ、ヘリに乗る時間である。掘立小屋みたいなヘリの待合所に向かうと、会話のない妙齢の女子二人組も同じヘリで帰るところだった。相変わらず会話が全くない。ヘリの会社の女の子がかわいかったのを覚えている。八丈島青ヶ島出身の子だろうか。

さて、初ヘリである。ローターが回っている下を歩いてヘリに乗り込む。エンジンのすぐ近くだからか、結構うるさい。また、席の配置が不規則だったのが印象的である。前から2-1-2-4みたいな配置だった。乗客は全部で5人。キャンセル料が安いので結構直前のキャンセルが多く、こういう状況になることは多いらしい。ヘリさえ取れれば青ヶ島に来たい人はもっといるだろうに、なんだかもったいない。離陸は飛行機よりもよっぽど穏やかであった。変にふわっとした感じもなく浮き上がる。そして加速しあっという間に青ヶ島が遠ざかっていく。さよなら青ヶ島。2〜300km/hくらいで運航しているはずだが、下が海で景色が全く変わらないので全くスピード感はない。揺れも全くなく、ある意味単調な20分ほどであった。ほどなくして、八丈島が見えてきた。これは見慣れた風景だ。南西側から入って、どうやら滑走路を東から進入するらしく、巻いていく。下ではマラソン大会をやっているのが見える。走りたかったなあ。あのどこかを初日会った豪快な妙齢の女性2人組のうち一人は走っていてもう一人は応援しながら飲んでるんだろうなあ。ヘリではあるが、真下に降りるのではなく、滑走路を走って下りて、地べたを移動してターミナルに着く。

ここから帰りの飛行機に乗るまでの約半日は八丈島の旅である。レンタカーを借り、まずしまぽ(前々回くらいにもでてきた島めぐりのスタンプラリー)を押しに観光協会的なところへ向かう。なんか感じのいいお姉さんが相手してくれて、八丈島の好感度がまずあがった。そしてその後、民芸館(旧村役場か何かを利用して、八丈島で使われていた古い道具など、民俗について学べる展示館)とふるさと村(昔の八丈島”らしい”家)に向かうことにする。これで4度目の訪問となる八丈島だが、これまで泳ぐとかしかしておらず八丈島の伝統や文化に触れることはなかったが、今回は八丈島をより深く理解するためそういった民俗などについて学ぶことにした。冬で泳げないし。
とはいえ、そこで書くことはまああまりないのだが、民芸館は昨年度末で休止、ふるさと村はこの翌々日くらいに全焼(!)するなどしてもはや見ることのできない施設にそれぞれなってしまった(しまう)ので、行ってしっかり見ておけたことは貴重であったと思う。

終わらせられなかった。つづく。